宿泊菌類観察会

開催日  201709月16(土)17(日)

宿泊地   車山高原  ペンション・グリーングラス

◎観察地
    車山高原一帯

参加者    16名

◎世話人     新井基永、福島隆一、籾山清、大曾根武

◎鑑定人     福島隆一

報告    
新井基永

撮影   
栗原晴夫

 

今年の秋季観察会は上原さんが体調不良のため実行できず急遽、新井がピンチヒッターでお世話することになりました。
 ペンション「グリーン・グラス」のオーナー江川さんは、曾て某商社の林業部に勤務、ボルネオ島でラワン材の出荷、管理等の業務を行い日本のキノコ研究者との交流もあったとのこと、その後車山の自然に魅了され脱サラ、ペンション経営に乗り出した経歴の持ち主です。
 上原さんとの交流は、江川さんが宿泊客にキノコ案内をする中で「アシベニイグチ」類のキノコの鑑定を依頼したのが始まりとのことです。
 観察会当日は、迷走台風18号が接近。大荒れが予想される最悪の条件のなかでの実施となりました。
 幸い台風の進行が遅れた為16日は何とか観察ができました。
 今年はキノコの発生が遅れているようで、車山高原より標高の低いオーナーのマル秘ポイントを大サービスで案内してもらいました。
 埼玉キノコ研究会のメンバーに、是非、車山高原の素晴らしいキノコフィールドを見てもらいたいとのオーナーの熱い気持ちとは裏腹に、発生は乏しく「ツノシメジ」が目立つ状況。傘の径が48センチの巨大「ムレオオフウセンタケ」を採集。鑑定会場まで運ぶ間、匂いに悩まされました。
 宿に帰ると、同じ菌類でも新潟の麹菌の働きの検証に余念の無いメンバーもいて「アセトアルデヒド」の副作用が心配される人もおりました。
 福島先生の鑑定の後、会食、オーナーの採集したキノコと会長差し入れのハナビラタケを使った料理の数々、「タマゴタケのスープ」「雑キノコの土佐酢漬け」「ハナビラタケのマリネ」「ホウキタケのワサビ醤油」「キノコと白身魚のムニエル」等々、いつもの観察会と違った料理で大満足でした。
 宴たけなわで籾山さんが、時期の早いサンタクロースの衣装をまとい山手線ゲームで大爆笑、盛り上がりました。 
 朝食は定番の「焼き鮭、のり、納豆」と違い、ハーブティ-orコーヒ、ハナビラタケのスープ、キノコ入りスクランブルエッグ等々いつもの観察会と違ったメニューで楽しめました。(※料理につきましてはアルコール性健忘症のため正確さを欠いております)。 
 朝食の後は台風の影響を考慮して早々に解散となりました。
 不慣れな世話人だった為皆様にご迷惑をお掛けしたかもしれません。お詫びいたします。
なお、採集したキノコの講評につきましては福島会長からご報告申し上げます。    

  

車山高原周辺で観察したきのこについて         報告 福島隆一 

アサネノムレオオイチョウタケ(仮名)(浅根群大銀杏茸)については、北陸のきのこ図鑑(カラー図版16162に記載されている種である。その昔上原さんがお元気な頃、福島県山王峠のトンネルの上で見つけた大銀杏茸属のきのこである。今回2度目であるが、一目で記憶が蘇った。ムレオオイチョウタケの根元は地中深くまで太い根の様な菌糸束の塊が伸びている。青木実氏の日本きのこ図版では、ネツキタケという仮名を付けているのも良く理解できる命名である。菌糸培養をしてみた限りでは腐生菌であるが、単なる腐生菌ではなさそうである。ムレオオイチョウタケと同じ様に菌糸生長速度の遅い白色コロニーである。
 その昔、兵庫県西宮市六甲山系にある社家郷キャンプ場で採集した個体は、試験管内で子実体を形成した。そこでオガクズ栄養培地に菌糸を蔓延させた種菌を沢山準備して、コナラやクヌギの根元に穴を掘りオガクズ種菌を大量に入れて観察をしたことが有った。結果はいつものようにウンともスンとも言わずじまいであった。平成38月に芝・米ぬか培地を梅の木の下に埋け込み、10月頃にはきっとカラカサタケが出来るものと思いこんでいたら翌年の梅雨のころ、傘の径が28㎝、高さが42㎝の大型のカラカサタケが出現した。
 アミガサタケは内外生菌根であることを理解した後でも、人の頭ほどもある偽菌核を作り、桜の木の根元に大量に埋め込み、きっと来年の春先には足の踏み場もないほどアミガサタケが発生するだろうと夢見て来た愚かさの繰り返しであった。いずれにしても何時でも観察できる近くの場所で行う事が大事である。   観察 命‼  
 今回沢山のツノシメジが採集された。自分の目でツノシメジの生育現場を確認したのは2009年9月長野県松原湖周辺で行われた菌学会のフオーレであった。いずれもシラカンバの腐朽倒木上に発生していた。ヒダと傘肉の部分を一緒に切れば比較的容易に培養できるが、菌糸やコロニーの成長速度が極度に遅く半年掛で小さなコロニーを生長させた。驚いたのは、小さなコロニーでも温度低下などにより多数の子実体原基が出来たことである。トンビマイタケやチョレイマイタケのように寒天培地上では難培養キノコでも、固形培地では菌糸生長が良好である事などから、固形培地による比較試験を繰り返せば、子実体の形成も可能ではないかとも思えた。今年は沢山の個体から培養しているので試してみようと思っている。
 今回の勉強会では、カクミノシメジスミゾメシメジが見られた。培養所見としては、ホンシメジやシャカシメジとよく似た菌叢である。昨年の上州武尊牧場で採集したカクミノシメジは、寒天培地上で無数の子実体原基を形成しているので、ホンシメジ等よりも栽培が容易であるかもしれない。これらは、菌根生のきのこであると書かれているが、澱粉などの多糖類を分解できるきのこは、栽培が可能であると思える。
 今回の勉強会では、4種類のカヤタケ属のきのこが見られた。北陸のきのこ図鑑(カラー図版8) 92に書かれているアシゲカヤタケ(仮)も見られた。また傘肉の色が灰黄土色をしているヒダの細かい大型のカヤタケ型きのこが見られた。培養してみた所コロニーの色も灰黄土色であった。きのこの色と培養菌糸の色がよく似ているものは沢山見られる。ムラサキシメジや今回見られたウスムラサキシメジ等も培養菌糸が薄い紫色になる。オオキツネタケ等では、組織から発菌して来る菌糸が鮮やかな紫色であり見とれてしまう程美しいが、コロニーが大きくなるにしたがい色が薄れてくる。しかしミツヒダサクラタケ(仮)のように個体は紫がかって居るが、培養菌糸は白色のきのこも多数見られる。ホシアンズタケの傘の色は、赤ピンク系の色であるが、この色素は子実体を形成する時に菌糸で製造され送られてくるものである。子実体形成の時には柄の途中から赤い色素を含んだ水滴が染み出し、濃縮されるので真っ赤なシミが柄の途中にへばりついて居るのを時々見かける。
 ザラミノシメジ属のきのこは今までに5種類ほど見ているが、今回は柄の長い白色タイプの個体が沢山見られた。堆肥などを撒いた畑などに見られるツブエノシメジとは異なり林の草地に見られる腐生菌である。ヨーロッパの図鑑では、よく似た色や形のきのこが記載されているが、一応シロザラミノシメジ(仮)という和名で記録した。
 カレバシメジ(仮)は北陸のきのこ図鑑(カラー図版11124に記載されている種である。まだ熊農に在職して居る頃、橋本武雄さんが福島県の山で採集した個体を見せて戴いたのが初めての出会いであった。その後ホクトの勉強会や菌学会のフォーレでも見かけたが、こんな大型のシメジに名前が付いていないというのが現状である。
 シロオオハラタケと記録した種については、埼玉県でも何度も見かけてきた。白いタイプのハラタケ属は沢山の種類が有り、A.aruvensisなのか判らないので近縁種という事で報告した。
 ニオイオオワライタケ(仮)についてはこれまで何度も報告してきたが、オオワライタケとは、菌叢が全く異なる事や桜餅のような強い香りが有る事などからコツブオオワライタケ(仮)北陸のきのこ図鑑(618)に記載されている種とも異なる。今まで柳の腐朽木から出ているきのこであると思ってきたが、今回は広葉樹であった。平成2年に桑の枝で人工栽培し、幼菌からバクサレまで詳細に観察したことが有った。
 今回、大型のコスリコギタケ3個体採集されたので久しぶりに培養してみた。以前2回培養したことが有ったが、いずれもバクテリア汚染で菌糸が採れなかった。柄(?)の内部の組織を切ったところ上手く菌糸が伸びてくれた。菌根菌でも、状況により菌糸が取れる場合も有る。
 なお採集目録の中に有る記号で◎は培養して菌糸が採れたものであり✖は失敗してしまった種である。キサマツモドキは何度培養してもバクテリア汚染を繰り返してきたので来年は異なる方法で培養する心算である


          
       参加者記念撮影  撮影;栗原         同定会場の様子   撮影;栗原

      
           
    48cmのムレオオイチョウタケ 撮影;栗原        ツノシメジ      撮影;栗原   

                 
       
       ミツヒダサクラタケ   撮影;栗原          

 

 白樺湖観察目録   (2017.09.16)

ハラタケ類

ハラタケ目

ヌメリガサ科

サクラシメジ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハラタケ類

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハラタケ目

シメジ科

カクミノシメジ

スミゾメシメジ

キシメジ科

ムレオオイチョウタケ

アサネノムレオオイチョウタケ(仮)

アシゲカヤタケ(仮)

カヤタケ属3

ウスムラサキシメジ

コノハシメジ

ツノシメジ

ミネシメジ

✖キサマツモドキ

シロザラミノシメジ(仮)

カレバシメジ(仮)

タマバリタ科

ワタゲナラタケ

クロゲナラタケ

ヒドナンギウム科

オオキツネタケ

キツネタケ属

ホウライタケ科

ヒロヒダタケ

クヌギタケ科

ミツヒダサクラタケ(仮)

テングタケ科

 

ツルタケ

カバイロツルタケ

フクロツルタケ

タマゴタケモドキ

タマゴテングタケモドキ

ミヤマタマゴタケ

コタマゴテングタケ

コガネテングタケ

ベニテングタケ

ハラタケ科

 

 

ハラタケ科

シロオオハラタケ近縁種

キツネノチャブクロ

キホコリタケ

カラカサタケ

ナヨタケ科

キララタケ

モエギタケ科

 

ハナガサタケ

アカツムタケ

ニオイオオワライタケ(仮)

アセタケ科

 

クロトマヤタケ

コバヤシアセタケ

オオキヌハダトマヤタケ

シラゲアセタケ

ムラサキアセタケ

アセタケ属3

フウセンタケ科

 

ツバフウセンタケ

キンチャフウセンタケ

ウスムラサキフウセンタケ

ヤマブキフウセンタケ?

フウセンタケ属多数

所属科不明

チャツムタケ属

イッポンシメジ科

ウラベニホテイシメジ

ミイノモミウラモドキ型

イッポンシメジ属

ヒダハタケ科

ヒダハタケ

イグチ目

ヌメリイグチ科

 

 

ベニハナイグチ

ウツロベニハナイグチ

シロヌメリイグチ

ハナイグチ

イグチ科

 

キアミアシイグチ

ヤマイグチ

ウラグロニガイグチ

ベニタケ目

 

 

 

 

 

 

 

 

ベニタケ目

 

ベニタケ科

 

 

 

 

 

 

 

 

ベニタケ科

クサハツ

オキナクサハツ

イロガワリベニタケ

カワリハツ

イロガワリシロハツ

ツチカブリ

ケシロハツ

ケシロハツモドキ

チチタケ

カラハツタケ

カラマツチチタケ

キチチタケ

アカモミタケ

チョウジチチタケ

ヒダナシタケ類

アンズタケ目

カノシタ科

シロカノシタ

ラッパタケ目

ラッパタケ科

 

ハナホウキタケ近縁種

ホウキタケ属4

スリコギタケ科

コスリコギタケ

イボタケ目

イボタケ科

モミジタケ

タマチョレイタケ目

タマチョレイタケ科

ホウロクタケ

カンバタケ

マスタケ

シロカイメンタケ

カイメンタケ

タバコウロコタケ目

タバコウロコタケ科

ネンドタケ

スッポンタケ類

スッポンタケ目

スッポンタケ科

スッポンタケ

キクラゲ類

キクラゲ目

キクラゲ科

ニカワハリタケ

                                   

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